2018年提言書

福岡市の基本的な市政方針として、国際的視野のもとに男女の平等な社会参加を実現するための先導的な啓発活動を期待しております。そのため国連が提唱する「持続可能な開発目標」(SDGs)の、特に第5目標の「ジェンダー平等」に向けた取り組みを強化することを提言します。

日本のジェンダー平等指数は国際的に平均を大きく下回り、その中でも特に本市は「アジアのリーダー都市」を謳っていながら、男女共同参画度は20政令市中下位を低迷している状態であります。男女共同参画推進に向けた取り組み強化の一環として「持続可能な開発目標」(SDGs)の啓発と具体的な啓発活動が求められております。

私たちに与えられている「リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」(性と生殖に関する健康と権利)を守って、心身ともに自立して生きていくことができるように、小・中学校での性教育の充実を望みます。

性教育というと、「性行為」を思いがちですが、根底にあるのは相手を認める(尊重する)ことや理解することであり、対等な関係を築くための教育であり、性行為はその一部であると考えられます。性教育の授業を受けた高校生の新聞記事より

しかし、デジタル情報網が発達した近年、子どもたちは間違った性の情報をインターネットなどから簡単に得ることができ、本来の「性教育」ではない誤った知識のままで成長することも多く、犯罪となる行為が後を絶ちません。(福岡県は、性犯罪認知件数が毎年のように全国ワースト3に入っています。)

人生において適切な選択ができるよう、また性的自己決定権について多くの子どもたちがその権利を行使できるよう、すべての小中学校における性教育の充実を要望します。

福岡市は性犯罪の人口比あたりの認知件数は政令指定都市の内ワースト上位を推移しており性犯罪抑止に向けた取り組みの強化が必要であるところから、専門家が指摘する次の二つの方策を提言します。

  1. 地域防犯の担い手として女性の参画を積極的に促すこと。大学・専門学校や企業において、市外からの流入者に対する
  2. 啓発活動をより強化していくこと。また 大学・専門学校においては加害防止研修を実施すること
  1. 性犯罪とは主に若年女性が被害者となるケースが多いところから被害者の気持ちに寄り添う地域防犯を進めるためにも、地域防犯の担い手として、女性の参画が今まで以上に求められています。
  2. これまで、地域防犯は主に町内会や自治会が担い手の中心でした。また、性犯罪に関する啓発活動 は小・中・高を中心に展開されてきています。しかし、福岡で発生する性犯罪の被害者には、18 歳または 22 歳になって、他の地域から移り住んできた人が相当数含まれています。このことは、地域防犯の現場において、これまであまり意識されてこなかったように思われます。 今後は、大学・専門学校や企業において、市外からの流入者に対する啓発活動をより強化していくべきであると考えます。福岡市は日本のみならず海外からも人を引きつける魅力をますます高めているところから、今後の防犯活動や啓発活動は、市外からの流入者に対して、今まで以上に積極的に取り組む必要があると考えます。
    さらに暴力の根を断つために、大学・専門学校における加害防止研修を実施することが求められます。

ワーク・ライフ・バランス推進のため、以下を提言します。

  1. 待機児童ゼロや、学童保育の充実など、女性が働き続けられるための環境整備にさらに力を入れていただきたい。
  2. 市長のリーダーシップで、管理職全員がイクボス宣言をするなど、福岡市役所における男性職員の家事・育児への参画を浸透させ、少なくとも「男性職員の育児休業」が、平成32年度目標値15%を達成することを提言します。

重点評価項目「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進」の評価について「おおむね順調」となっていますが、平成25年度の男女共同参画社会に関する意識調査で、「男性も育児休業を取ったほうが良いか」という項目では80%以上の人がとることに賛成しているのに「現実には取りづらい」と答えた人は60%以上を示しています。また、ふくおか女性活躍ネクスト企業 見える化サイトで、「子育てサポート企業」くるみんの認定企業は21社、プラチナくるみんを認定された企業は3社にすぎません。「おおむね順調」という評価は理解できません。

 ワーク・ライフ・バランスは、経営戦略の重要な柱とも言われ、育児や介護で離職するのは経済的にも非効率であることが証明されています。またワーク・ライフ・バランスの推進に力を入れている自治体や企業では女性活躍も進むという結果も出ています。行政・企業・地域など社会全体でワーク・ライフ・バランス推進の機運を醸成することが求められています。例えば「イクボス宣言」を行う企業を増やし、ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン等を行うことを提言したいと思います。そして、待機児童ゼロや、学童保育の充実など、女性が働き続けられるための環境整備に力を入れていただきたいと思います。 

 また、福岡市は事業主行動計画を策定し、長時間労働の軽減や有休取得、男性の育児休業取得率UPなど、子育てを行う職員のワーク・ライフ・バランス推進に取り組んでいますが、公表された福岡市特定事業主行動計画では、「男性職員の育児休業、部分休業、育児短時間勤務のいずれかの取得した割合」は10.8%と、32年度目標値15%には程遠い上に、部分休業や、短時間労働勤務も含めての数字となっていて国や他の自治体と比較することもできません。

市長のリーダーシップで、管理職全員がイクボス宣言をするなど、福岡市役所における男性職員の家事・育児への参画を浸透させ、少なくとも「男性職員の育児休業」が、32年度目標値15%を達成することを提言します。

主管課が行う様々な講座のすべてに『働くあなたのガイドブック』などを活用し、「労働者の基本的な権利」に関する資料と説明を組み込むこと。特に就業・起業支援や働く女性を対象としたものには、具体的な権利と困ったときに相談できるところを明記し、知らせること。

女性の貧困問題の最大の要因は根強い性別役割分業意識に基づく労働の場での格差、差別にあると考えられます。権利について学ぶ機会が少ないために女性の活躍の場(働く場)が奪われており、基本的な権利の周知とそれを守る行政の手立てが重要であると考えます。

将来的に全市職員の男女比が均等になるように、採用に当たっては、募集等を工夫して女性の受験者数を増やす努力をすること

福岡市は「福岡市特定事業主行動計画」に基づいて、市職員の男女共同参画推進に取組んでいます。下図は同行動計画の報告に基づいた平成27年5月1日現在の「年齢別・男女別職員構成」を示したものです。女性比率は50歳以上が15.7%、年齢が下がるにしたがって順調に増え続けて35~39歳で40.4%に達しています。しかし、その後、減少に転じ19~24歳では34.7%です。

将来的に全職員の男女比が均等になるためには、当分、新採用の女性比率を上げる必要があります。平成30年度の新採用の女性比率が過去最高の50.5%となったことは評価できますが、これを継続させるために、県下の大学や専門学校等に働きかけて、女性の採用試験受験者を増やすための工夫・努力をすることを提言します。

審議会等の男女平等を達成する為に、委員の選任基準を見直し広く市民の意見を反映できるよう人選について工夫すること

福岡市の審議会等委員の女性比率の目標値は平成32年までに40%です。しかし、平成27年から30年の3年間で僅か1%しか増えておらず、未だに34.7%です。

県内市町村の審議会等における女性比率(H29.4.1現在)で福岡市は14位、1位の北九州市は52.5%、既に6市が40%以上を達成しています。

アジアの中心都市を標榜する福岡市がこれで良いのでしょうか。

委員の女性比率が30%に達していないような審議会等においては、早急に、女性の参画が可能になるように委員の選任基準を見直す必要があります。

たとえば、以下のようなことが考えられます。

  1. 法令で“あて職”が規定されているような審議会等では、関係機関や団体に推薦依頼をする場合に、「団体の長」や幹部役員に限定せず、一般の女性構成員が参画可能となるようにする
  2. 市の裁量で専門職種を設定できる場合には、現に女性が活躍している専門職種に振り替える
  3. 委員推薦の要請先に男女同数の推薦を依頼する女性比率が30%に達していない審議会等については市民公募委員の「女性枠」を設ける等々。

このような工夫を取入れて、審議会等の設置を定めた条例、規則、要綱等を男女共同参画社会に相応しいものに改正することを提言します。

  1. 地域における女性リーダー育成のため、講座の充実を図っていくことが望まれます。地域女性活躍チャレンジ塾は一つの貴重な場ですが、参加者は減少傾向にあり(平成28年度30名、29年度15名)、講座についてさらに広く周知をしていく必要があります。また、講座を受講するのみでは地域に戻った際に、十分に力を発揮していくことは困難であるところから、受講者のフォローアップの機会を設け、女性リーダーとして地域で活動するためにサポートをしていくことが重要です。

  1. 公民館職員が果たす役割の大きさから、職員研修の義務化をお願いするとともに、校区単位で男女共同参画の啓発を進めていくために「男女共同参画学習講座」を公民館の必須事業とする必要があると思われます。

以上の点において地域における男女共同参画の推進に向け、さらなる支援の強化を提言します。

福岡市は2018(平成30)年に制定された「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」を遵守し第5条から第8条に沿った措置を速やかに実施すること。

福岡市の女性議員は62人中6人の9.7%で、20政令指定都市中最下位となっています(平成27年)。本法において地方公共団体の努力義務となっている、第5条<実態の調査及び情報の収集等>、第6条<啓発活動>、第7条<環境整備>、第8条<人材の育成等>、を早急に実施し、政治の分野における男女共同参画の推進を図ることが重要です。

 

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